人の生涯には、忘れられない瞬間があります。それは時に人生を根底から変える出来事であり、その記憶は年月が経てども色褪せることなく、鮮明に心に残り続けます。タレントの麻木久仁子さんにとって、その一つが弟の突然の事故死であり、その出来事は彼女の人生観や家族への思いを形成する上で、重要な役割を果たしています。
交通事故という悲劇
麻木久仁子さんの弟さんは、昭和45年5月、わずか5歳でこの世を去りました。彼の死因は交通事故であり、この年は日本において交通事故死者数が史上最悪、1万6,765人にのぼる「交通戦争」と呼ばれる時代でした。弟さんは母親と買い物中、一瞬の隙に道路に飛び出し、トラックにひかれてしまいます。弟さんが拾おうとしたのは、当時流行していた酒蓋を使ったおはじきでした。ほぼ即死だったと麻木さんは語ります。
消えない記憶、残る後悔
弟さんの死が麻木さんにとっていかに衝撃的だったか、その強さは彼女が7歳の時に遭遇した出来事にもかかわらず、今でも鮮明に記憶されていることからも伺えます。特に、弟さんとの最後のやりとりが、ケンカの末の別れだったことは、麻木さんの心に深い後悔として残っています。この体験から、「ケンカをしたまま別れたくない」という思いが強くなりました。
家族への深い愛情
この切ない体験は、麻木さんが自身の家族、特に娘さんと関わる上で、大切な教訓となりました。麻木さんは、たとえ娘さんを叱ることがあっても、必ず「おやすみ」の際には笑顔で接するようにしています。「少なくとも家族とだけは、ケンカしたまま別れたくない」という強い思いから、彼女は毎晩、温かい心でその日を終えるよう努めているのです。
弟の事故死が教えてくれたこと
麻木久仁子さんにとって、弟の事故死は決して忘れることのできない辛い記憶ですが、それと同時に大切な人への愛情の深さや、その人との関係を大切にすることの重要性を改めて教えてくれました。人との別れは時として突然やってくるものであり、その時に後悔のないように、日々の繋がりを大切にすることの大切さを、麻木さんの体験は私たちに伝えています。
